イノベーション創出強化研究推進事業「雑穀需要に応える短稈・多収アワ品種の育成と機械栽培体系の確立」というプロジェクトでは、4年間にわたって岩手県農業研究センター県北農業研究所を中心としたコンソーシアムメンバーが、アワ新品種に関する研究を行いました。
岩手県は、日本で最も大きな雑穀の生産地であり、アワはその中でも重要な位置を占めています。しかし、生産者の高齢化や担い手不足などの理由で、アワを含む雑穀の生産量は減少しています。岩手県で育成された黄色いもちあわ品種「ゆいこがね」は人気がありますが、稈長が長くて倒れやすいという欠点があります。そこで、稈長が短くて倒れにくく、収量が多く、黄色味が濃い品種を育成することを目指しました。
このプロジェクトでは、育成品種の特性に合わせた栽培法を開発し、作業性や収量の向上や技術面にも着目し、手作業が中心で作業性が低い問題を解決するため、機械化栽培体系の確立にも取り組みました。これにより、雑穀生産の持続可能性を高めると考えられています。さらに、ゲノムシーケンスを用いて、育成品種と国内外のアワ遺伝資源や流通するアワを区別するためのDNAマーカーを開発しました。これらの成果により、新品種の識別性を高め、ブランド戦略につながると考えています。
また、日本雑穀協会認定の有資格者による調理加工適性や食味評価、実需者による試作評価アンケートから、新品種の有用性と可能性を確認いたしました。本サイトでは、得られた新品種の特徴や加工適性、実需者による評価を紹介し、実際の流通に向けて、アワ新品種の魅力を広く知ってもらうための情報発信を行います。
市場評価が高い品種の開発と普及は、生産者にとっては収益性が高まり、消費者にとっては高品質のアワを手に入れることができるため、農業・食品産業全体の発展につながることが期待されています。このプロジェクトが、日本の雑穀産業の発展や、アワを通じた食文化の多様性の確保に寄与することを願っています。